2011年12月31日土曜日

研究分野・プロジェクト


■ 研究分野


産業界、政府機関など連携機関と共同研究に関する協定、覚書を締結するなどして研究協力体制を整え(「実施体制」を参考)、各プロジェクト毎に以下の分野を研究しています。

(1)イノベーション過程の測定
オリジナルなデータを収集あるいは開発し、知識融合、知識生産のメカニズム、知識の商業化過程などの実態を把握、分析する。

(2)技術経営
研究開発の成果を国あるいは産業界全体として効率的にイノベーションに結びつけていく技術経営の在り方を研究。

(3)政策・制度
上記の事例研究、統計的なデータベース、国際比較研究をベースに、日本における新産業の創出、既存産業の持続的な革新に障壁となっている問題点を分析し、今後の政策・制度設計のあり方に関して、斬新な提言につながる研究を行う。


 
研究プロジェクト[1] サイエンスにおける知識生産プロセスとイノベーション創出の研究プロジェクト

― 文部科学省科学技術政策研究所とのサイエンスにおける知識生産プロセス、産学間の知識移動及び政府研究開発投資の資源配分構造に関する研究等に関する研究―
 
 日本の科学者への知識生産過程についての包括的な質問票調査を行い(約2100名回答)、その概要報告は、同研究所との共同ワークショップで昨年10月に発表して大きな注目を浴びた。英文報告書も作成し、研究成果を国際セミナー、国際ワークショップで発表した(OECD、2010年8月、4th BRICK-DIME-STRIKE Workshop、2011年2月、第二回アジア太平洋イノベーション・コンフェレンス、2011年5月)。後者のトリノ大学でのワークショップでの発表は10倍を超える倍率の中、招待論文として選ばれた。ジョージア工科大学と協力して実施した米国のサーベイも今年3月に終了し、2,300名を超える回答(完全な)を得ることができた。これによる比較分析の結果を、科学技術政策研究所と共同で実施する日米ワークショップ(米国NSF後援)で報告した。

 さらに、ジョージア工科大学のJohn Walsh教授と協力して、日米の回収サンプルを比較できるように集計し、日米のサイエンスにおける知識生産プロセスの詳細で構造的な比較分析を行った。また、日本において、セレディピティー、プロジェクトの段階別の資金利用状況等についてフォローアップサーベイを行った。これらの研究成果は、「科学における知識生産プロセス日米ワークショップ」(文部科学省科学技術政策研究所との共催、米国のNSF(全米科学財団)の後援、2011年6月23日に実施)において報告し、ポーラ・ステファン教授(ジョージア州立大学教授)およびデイヴィッド・マワリー教授(カリフォルニア大学バークレイ校/全米経済研究所)等から高い評価を得た。日米比較分析の結果は、イノベーション研究センターのワーキング・ペーパー(IIR WP #11-09 “Knowledge Creation Process in Science: Key Comparative Findings from the Hitotsubashi-NISTEP-Georgia Tech Scientists' Survey in Japan and the US”)として公表した。また、関連データの整備も進めて、テーマ別の分析を実施して、その中間成果を以下の研究報告にまとめ、学会等で報告を行った。(1)「パスツールの象限における研究:その重要性」、(2) 「科学のマネジメント、セレンディピティー、研究業績:日米における科学者調査より得られたエビデンス」、(3) 「科学における知識生産に対する研究チーム組織および研究資金の影響」および(4)「科学的発見の商業化プロセス」。

*主な成果*

・Nagaoka, Sadao, Masatsura Igami, John P. Walsh and Tomohiro Ijichi , 2011, “Knowledge Creation Process in Science: Key Comparative Findings from the Hitotsubashi-NISTEP-Georgia Tech Scientists' Survey in Japan and the US”, IIR Working Paper WP#11-09, 2011年10月 

・長岡貞男・伊神正貫・江藤学・伊地知寛博, 「科学における知識生産プロセスの研究―日本の研究者を対象とした大規模調査からの基礎的発見事実」 , IIRワーキングペーパー WP#10-07, 2010年11月 

・Nagaoka Sadao, Masatsura Igami, Manabu Eto, Tomohiro Ijichi, 2010, “Knowledge Creation Process in Science: Basic findings from a large-scale survey of researchers in Japan”, IIR Working Paper WP#10-08 




 
研究プロジェクト[2] 産学官連携研究に関する研究プロジェクト

― 文部科学省科学技術政策研究所と共同で、産業連携による研究開発に関する質問票調査を実施中―
 
 文部科学省科学技術政策研究所と共同で、産業連携による研究開発に関する質問票調査を実施中である。調査対象は2004~2007年度に出願された産学共同発明特許をもたらした研究プロジェクトである。調査趣旨等、概要はこちらを参照。⇒
 
研究プロジェクト[3] ノーベル賞の分析による研究者の知的創造過程と研究振興政策の関係に関する実証研究

 
 ノーベル博物館等財団の関係機関により800名以上のノーベル賞受賞者及び研究成果のアーカイブ化が進んでおり、これを活用して他の先進主要国と比較しつつ、日本の研究振興政策の変遷とブレークスルー型の知識創造プロセスの関係について分析を行う。世界における学術的地位の視点から各国のパフォーマンスの差を探求する定量的国際比較分析を行う。また、賞の関連資料や文献の分析、関係者へのインタビュー等により、研究者のライフサイクルを通じた研究助成の影響に関するケーススタディも併せて行う。これらを踏まえて、公的な研究振興政策のブレークスルー型の知的創造活動への影響を評価する尺度としてのノーベル賞の有用性を検証する。
 
研究プロジェクト[4] NEDOとの共同研究プロジェクト

― NEDOとの政府支援研究開発プロジェクトのデータを活用したイノベーション過程と研究開発プロジェクトのマネジメント手法等に関する研究―
 
 NEDOの協力を得て政府支援プロジェクトにおける知識の生産・商業化の過程を詳細に把握できる新たなデータベースを構築し、プロジェクト・レベルでのイノベーション過程の研究を行っている。具体的には、NEDO実施のプロジェクト・フォローアップ調査に設計段階から調査項目の改良に貢献すると共に、調査結果を活用した研究プロジェクトのマネジメントや当該技術の波及状況に関する研究を進めてきている。また、NEDOと共に支援対象プロジェクト及び参加研究者への新たな質問票調査を実施した。調査は約250の研究プロジェクトを対象とし、約140のプロジェクトにつき、約300名の中核的研究者から回答を得た。

 2011年度は、質問票調査で得た知見を「NEDOプロジェクトから見たイノベーション過程」として学術雑誌に公刊した。ヒアリング調査や発明データ整備も進め、プロジェクトと企業組織、コンソーシアム実施形態と情報共有、参加研究者の発明活動の変化等の研究を進め成果5本をワークショップで発表した。

*主な成果*

・長岡貞男・江藤学・内藤祐介・塚田尚稔「NEDOプロジェクトから見たイノベーション過程」, 『経済研究』、Vol. 62, No.3,253-269頁,2011年7月

・青島矢一・松嶋一成・江藤学「公的支援R&Dの事業化成果:NEDO研究プロジェクトの追跡調査研究」,『日本企業研究のフロンティア・第7号』,第7章,一橋大学日本企業研究センター編,有斐閣,73-87頁,2011年3月
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・松嶋一成「公的支援による民間の研究開発活動への影響」, 『日本企業研究のフロンティア・第7号』,第9章,一橋大学日本企業研究センター編,有斐閣,99-111頁,2011年3月

・長岡貞男・江藤学・内藤祐介・塚田尚稔「NEDOプロジェクトから見たイノベーション過程」, 『経済研究』、Vol. 62, No.3、近刊(2011年7月)




研究プロジェクト[5] 半導体産業の競争と協調過程の研究プロジェクト

― 半導体分野でのロードマップの社会的意義・発展可能性、世界的研究開発システム内における日本の研究開発システムに関する研究―
 
 半導体技術ロードマップ策定に主体的に参加してきた経験を持つデバイスや装置のメーカーの半導体技術者ならびに半導体プロセス技術に関する世界的な研究者、半導体産業政策に詳しい経済産業省行政官などとの共同研究を推進している。日立中央研究所、ニコン、東京エレクトロン(TEL)、物質材料機構(NIMS)・産業総合研究所(AIST)等で先端的な研究開発に従事した研究者の方の協力を得ている。半導体先端プロセス技術に関する世界規模での共同研究開発プロセスの経緯を、特に横断的・経時的な人と人との結びつきをネットワーク分析手法によって分析している。イノベーション・プロセスに焦点を当て、製品の複雑化やそれに付随した技術難度の幅と深さの急拡大によって不連続的に変化してきた技術・市場と組織の双対性という視点から日本企業の“弱み”と“強み”とを明らかにし、その克服策を模索する研究を行っている。


 2011年度は、最先端プロセス技術を事例として世界の関連R&Dネットワーク内での日本勢の特徴を明確にするため、ベルギーIMEC、フランスLETI、フィンランド・ALD発明者等への追加調査を実施、加えて大量のUS特許・主要学術論文データに基づいた社会ネットワーク分析を行った。その成果の一部を学術雑誌から公刊した。また、同傾向が半導体設計分野でも発生している様子を一目瞭然化するため、STARCや日立中央研究所の設計開発者達との研究会を開始した。関連して国内外関連数社への聞き取り調査を実施した。さらに、半導体用測長SEMや半世紀ぶりのイノベーションである電子顕微鏡球面収差補正技術に関する国内外での調査を追加実施した。

*主な成果*

・中馬宏之、『半導体産業のR&D戦略の特徴を探る:ネットワーク分析の視点から』『経済研究』,Vol. 62, No.3,225-240頁,2011年7月.

・Chuma, Hiroyuki, Norikazu Hashimoto, “Moore's Law, Increasing Complexity and the Limits of Organization: The Modern Significance of Japanese Chipmakers' Commodity DRAM Business”, In H. Itami, K. Kusunoki, T. Numagami, and A. Takeishi(eds.) Dynamics of Knowledge, Corporate Systems, and Innovation, Springer, (conference volume), pp. 209-245, 2009

・中馬宏之、「サイエンス型産業 における国際競争力低下要因を探る:半導体産業の事例から」、藤田昌久・長岡貞男編『生産性とイノベーションシステム』(2011)第7章、317-360頁に所収。

・中屋雅夫 2011/03/17 「半導体産業の収益性分析:半導体企業パネルデータによる実証分析」 IIRワーキングペーパー WP#11-03 一橋大学イノベーション研究センター

・龜山雅臣 2010/09/10 「リソグラフィとITRS」 IIRワーキングペーパー WP#10-06 、一橋大学イノベーション研究センター 




研究プロジェクト[6] バイオ分野のイノベーションプロジェクト

― バイオ・ライフサイエンス分野における、ハイテク・ベンチャー企業及びアライアンスのあり方の研究―

 
 バイオ・インダストリー協会及び日本製薬工業協会の医薬品産業政策研究所と協力して、以下の三つの視点から研究を進めてきている。第一に、日本のバイオベンチャーの参入・成長メカニズムについて、バイオ・インダストリー協会と協力して、設立間もない企業含めてバイオ企業約800社に対する質問票調査を行い(回収は200社から300社)、コア技術の源泉、経営者の交代、IPOへの意志、研究開発資金の制約など、参入時点からの成長過程の詳細な把握ができるデータを構築し、これによる参入と成長の過程の研究を行っている。第二に、日本製薬工業協会の医薬品産業政策研究所とは、医薬産業とスタートアップ企業とのアライアンスの日米欧比較研究を行っている。本研究は、ライセンスのみではなく、合併や買収によるバイオ技術の導入を含めて、包括的にアライアンスの推移を、日米欧それぞれのトップ10社について比較研究を行った非常に斬新な研究である。第三に、イノベーションには比較的少数の発明が経済効果の大部分を実現するという偏った傾向がある。このことから、「史上最大の新薬」と言われているスタチンの発明者である遠藤章先生の協力を得て、その発見と商業化の過程について詳細な事例研究を進めている。また、日本初の抗体医薬を開発した大杉義征博士の協力を得て同様の事例研究を進めようとしている。

 2011年度は、バイオ・インダストリー協会と実施中のスタートアップ企業調査の成果をAmerican Economic Associationで発表した。関連する新たなWPも公刊した。日米上場バイオ企業の成長要因の比較分析、日本初の抗体医薬アクテムラ開発過程の事例研究成果を研究ワークショップで発表した。

*主な成果*

・本庄裕司、長岡貞男、中村健太、清水由美、"バイオベンチャーの成長への課題:提携と代表者の交代を中心に" IIRワーキングペーパー WP#12-01、2012 

・Braguinsky Serguey,Yuji Honjo,Sadao Nagaoka, Kenta Nakamura, “Science-Based Business: Knowledge Capital or Entrepreneurial Ability? Theory and Evidence from a Survey of Biotechnology Start-ups” IIR Working Paper WP#10-05, March 2011

・本庄裕司、中村健太、長岡貞男、清水由美、“日本のバイオ・スタートアップ:コア技術の獲得、アライアンス、成長への課題” IIRワーキングペーパー WP#10-03、2010 

・高鳥登志郎、中村健太、長岡貞男、本庄裕司、“日米欧製薬企業のアライアンスの構造とパフォーマンス”、 IIRワーキングペーパー WP#09-07、2009 

・本庄裕司・中村健太・長岡貞男・清水由美「バイオスタートアップ企業の参入と成長」 IIRワーキングペーパー WP#09-06, 2009 

研究プロジェクト[7] 標準などその他の分野

― 標準とイノベーションなどその他分野の研究―


   江藤学教授が中心となって、「標準化動向とイノベーションの相互関係に関する研究」も行っている。標準化がイノベーションにどのような影響を与えているかを様々な事例から分析し、それを基に、ビジネス活動における標準化の活用手法、それを活用する人材の育成手法等を開発し、これを産業界に普及することを目的とした研究を行った。

*主な成果*

・藤野仁三・江藤学(編著)「標準化ビジネス」(3,4,5,6,9章執筆)白桃書房(2009/12) 
・江藤学:「規格に組み込まれた特許の役割」国際ビジネス研究学会年報第14号(2008/9) 
・江藤学:「標準のビジネスインパクト: 試験方法標準が変える競争」、『一橋ビジネスレビュー』、57巻3号、2009年12月、6-19頁

・Eto, Manabu, “Definitions and Functions” in Donggeun Choi & Byung-Goo Kang eds., Standardization: Fundamentals, Impact, and Business Strategy (APEC SCSC Education Guideline 3) , Chapter 1, June 2010, pp. 3-36

・Eto, Manabu:” Lifecycle, Organizations, and Development Procedures” in Donggeun Choi & Byung-Goo Kang eds., Standardization: Fundamentals, Impact, and Business Strategy (APEC SCSC Education Guideline 3), Chapter 2, July 2010, pp. 37-55

・長岡貞男・塚田尚稔「標準をもたらす研究開発と標準に依拠した研究開発--その特徴の分析」、『一橋ビジネスレビュー』、57巻3号、2009年12月、50-65頁

・Nagaoka, Sadao, Naotoshi Tsukada and Tomoyuki Shimbo,“The Structure and the Emergence of Essential Patents for Standards: Lessons from Three IT Standards,”in Canter, Uwe, Jean-Luc Gaffard and Lionel Nesta, eds. Schumpeterian Perspectives on Innovation, Competition and Growth, Berlin : Springer, 2008

研究プロジェクト[8] 研究データベースの整備
   特許データベースをイノベーション研究に活用するための手法の開発も行っており、特許データベースの連動型の質問調査システムの開発、日本の発明者の名寄せソフトウェアの開発などを行っている。

研究プロジェクト[9] イノベーションの科学的源泉とその経済効果の研究 
                         科学技術イノベーション政策のための科学(JST)
   イノベーションの科学的な源泉とその経済効果を適切に把握することが、政策の科学を発展させる上で非常に重要である。
本プロジェクトでは、医薬・バイオ分野においてイノベーション実施者にその科学的な源泉について体系的な調査を行って、サイエンスを源泉としたイノベーション創出のメカニズムを把握する客観的データを構築する。また、それを拠り所として、論文や特許の公開情報がサイエンスからの知識フローを把握する程度を評価し、その把握力を高める手法を研究するとともに、サイエンスに基づくイノベーションの経済効果を評価する。これらを踏まえ、サイエンスのイノベーションへの貢献を高めるための政策設計に有用な、オリジナルなデータや分析手法を提供するとともに、政策提言を行う。