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2011年12月31日土曜日

科学における知識生産プロセスに関する調査-成果

科学における知識生産プロセスに関する調査

調査概要及びそれによる研究成果



■   調査概要及びそれによる研究成果


  イノベーション研究センターと文部科学省科学技術政策研究所は、日本の全分野の研究者を対象とした包括的な質問票調査(「科学における知識生産プロセスに関する調査」)を2009 年末から2010 年春にかけて実施しました。

(調査対象)
調査は、2001年から2006年に発表(データベースに収録)された科学論文のうち、いずれかの著者の所属機関に日本に所在する機関が含まれている論文で、被引用数上位1%の高被引用度論文(調査対象の約3分の1)と、それ以外の通常論文(高被引用度論文を除く無作為抽出論文、調査対象の約3分の2)の著者に対して、論文を生み出した研究プロジェクトについてのアンケート調査を行ったもので、約2,100件の回答を得ました(回答率約27%)。

(成果報告)
本調査から、科学研究における多様な人材や研究マネジメントの重要性、科学研究の不確実性の度合い、研究プロジェクトが生み出す特許出願や共同研究・受託研究、標準などの包括的な状況が、初めて定量的に明らかにされました。調査結果の概要を以下に纏め、2010年11月4日に公表しました(参考資料として、巻末に調査票、及び集計表を含めています)。

「科学における知識生産プロセスの研究 ― 日本の研究者を対象とした大規模調査からの基礎的発見事実 ―」(長岡貞男・伊神正貫・江藤学・伊地知寛博,IIRワーキングペーパー WP#10-07_1(本論),WP#10-07_2(参考資料: 調査票・集計表),2010年11月 
                           [pdf版 download]
                            (本論) (参考資料: 調査票・集計表)

本ワーキングペーパーでは、調査の重要な基礎的発見事実と考えられる点を要約し、今後の調査課題を含めた含意を述べています。今回の報告は、分析の第一段階であり、これらの発見事実をもとに、今後更なる分析を進めていきます。調査で得られた研究プロジェクトについての包括的なデータセットを活用し、また、書誌データや引用データなどとも組み合わせ、発見事実の背景にあるメカニズムや原因の解明に資する分析を実施する予定です。

科学における知識生産プロセスに関する調査-Q&A


科学における知識生産プロセスに関する調査 

調査票についてのQ&A 

■ 質問票にかかるQ&A 

                           2010年2月16日版 


  Q. (全般) 本調査のねらいは何ですか。

  A. 科学における知識創造過程や科学知識からイノベーションが創出される過程についての、体系的なプロジェクトレベルの実証研究は、日本のみならず世界的にも存在していないのが現状です。本研究では、文部科学省科学技術政策研究所との共同研究により、日米の全分野の科学者を対象とした包括的な質問票調査を行い(日米それぞれ7千名以上を対象)、科学における知識生産プロセスとそのイノベーション創出における日本の構造的な特徴を明らかにする客観データを得ることを目的としています。米国については、米国のジョージア工科大学などの協力を得て、2010年の夏に実施の予定です。これによって、日米のサイエンスにおける知識生産プロセスへの構造的な理解を深めるとともに(具体的論点については http://www.iir.hit-u.ac.jp/iir-w3/reserch/sgk_chosa_gaiyo.html を参照下さい)、今後の科学技術政策への客観的な基礎データを構築することをねらいとしています。

   
  Q. (全般) 私は責任著者ではないのですが、回答の必要はありますか。 

  A. 本調査は責任著者ではない方であっても、基本的な部分の回答が可能な方には回答をお願い申し上げております。ただ、もし本調査への回答者として、明らかにより適当な方が他におられます場合には、科学者サーベイ担当(survey_sci@iir.hit-u.ac.jp)まで、その方の氏名、連絡先(Emailアドレスを含む)をご連絡頂けますと幸いです。よろしくお願い申し上げます。

   
  Q. (全般) 私は既に退職しておりますが、アンケートへの回答をした方が良いでしょうか。 

  A. 本研究は、既に公刊された論文を生み出した、過去の研究プロジェクトに関して、調査をしておりますので、現在は退職されていても、ご回答頂けますと大変に幸いです。ご回答頂く方の多様性が高まることは、日本の科学研究の過程を把握するデータベースの客観性と価値を大いに高めることになります。こうした趣旨を踏まえてご協力を頂けますと大変に幸いです。

     
  Q. (全般) 調査対象の論文は、特に、外部資金に基づくプロジェクト研究の 一部で行ったものではなく、アンケートの趣旨に合わないと思いますが、答える必要はあるでしょうか。

  A. 今回の調査は科学研究における知識生産過程全般について客観的なデータを体系的に収集させて頂くことを目的としております。このため、外部資金を得たプロジェクト研究を前提としているわけではなく、全く外部資金を利用しない小さなプロジェクトを含めて、それぞれにカバーすることを予定しております。密接に関連する研究論文が他に無い場合には、当該論文を生み出した一連の研究過程をプロジェクトと定義頂いて問題は全くありません。こうした趣旨を踏まえてご協力を頂けますと大変に幸いです。

   
  Q. (全般) 対象論文は私の最も良い論文ではなく、対象論文の抽出にバイアスがあるのではないか。 

  A. 本調査の対象は、実は論文ではなく、抽出された論文を生み出した研究プロジェクトです(論文は手がかりです)。質問も大半がプロジェクトに関連するものです。したがって、そのプロジェクトが当該論文の他に、より影響力のある論文を成果としてもたらしている場合も十分あり得ると考え、プロジェクトの代表論文を別途、質問の5-1でお伺いしております。また、今回の調査は科学研究における知識生産過程全般について客観的なデータを体系的に収集させて頂くことを目的としております。このため、手がかり論文としては、引用度トップ1%の論文に優先度は与えているものの、大きなプロジェクト、小さなプロジェクト、成功したプロジェクト、それ程ではなかったプロジェクトをそれぞれランダムにカバーすることを予定しております。そのため、研究者各位の最も成功したプロジェクトのみをカバーする設計とはなっておりません。こうした趣旨を踏まえてご協力を頂けますと大変に幸いです。

     
  Q. (全般) IDやパスワードを入力してもWEB調査画面にログインできない。


  A. IDとパスワードは、それぞれ8桁で、最初の2桁がアルファベット、後の6桁が数字からなっています(いずれも半角)。入力いただくIDやパスワードのアルファベット、数字をご確認いただき、再度ログインをお願いします(アルファベットのO(オー)と数字の0(ゼロ)には特にご注意下さい)。

     
  Q. (全般) 「途中で保存」ボタンはどこにあるのか。回答が送信されたか不安だ。

  A. 本調査は全部で7つのパートから構成されており、各パートの最後に「途中で保存」ボタンがあります。このボタンを押していただくと、そこまでの回答を保存・送信して中断し、後刻、IDとパスワードで再度ログインいただいて回答を再開することができます。また、パート7の最後の設問の後には、アンケートの全ての回答データを送信するボタンを押すページがあります。最後に「全ての回答データを送信する」ボタンを押していただくようお願いいたします。

   
  Q. 問1-5 につき、「潜在的に競争相手となり得る研究チーム数」をどのように判断したら良いですか。

  A. 研究プロジェクトを開始した時のあなたの認識として、潜在的な競争相手はいくつあったかをお答え下さい。プロジェクト開始時に、既に競争的に研究開発を行っていた事実が知られていたチームのみではなく、研究を行っている事実の確認は無くてもそれが予想されたチームも含みます。

   
  Q. 問1-7において、対象論文と同じ研究領域における世界全体の研究成果の中での論文の重要性をどのように評価したら良いですか。 

  A. 当該研究領域における科学的な成果としての重要性です。当該分野の世界的な研究者コミューニティーによってもし評価されたとしたら、どのようなランクになるであろうかとお考え頂けますと幸いです。被引用件数や研究成果が産業的な成果をもたらしたかどうかとは、関係はあり得ますが、あくまで科学的な成果に注目して貴方の自己評価をお答え下さい。

   
  Q. 問1-8 研究プロジェクトの研究成果において、論文の重要性をどのように評価したら良いですか。

  A. 問1-7と同じく、当該研究領域における科学的な成果としての重要性です。

   
  Q. 問2-3  ミーティングを通じた研究チーム全体での情報の共有には、顔を合わせるミーティングではなく、インターネット(メールなど)を利用した情報の共有も入りますか。 

  A. 顔を合わせるミーティングと同じような情報共有が可能な程度に組織化されている場合にはそれを含めて考えて下さい。

   
  Q.
 問4-1  職階の選択肢において、選択肢にない肩書きを持つ人はどのように分類すれば良いですか。例えば、大学の名誉教授や企業の研究理事などはどの選択肢に当たるのでしょうか。 

  A. 名誉教授や研究理事など教授クラスよりも職階が上であると判断される場合でも教授クラスを選択して下さい。イ~トの中に最も近いと思われる選択肢がない場合、あるいは判断が出来ない場合のみ「チ.その他」をお選びください。

   
  Q. 問5-4 外部機関との連携で機関数を書く場合に、特定のプロジェクトに複数機関が参加している場合、機関数は1とするのか、すべての参加機関をカウントするのか。 

  A. 実質的な連携関係がある機関は、それぞれ別々にカウントして下さい。

   
  Q. 問5-5(特許出願)で特許出願の有無を聞いていますが、現在出願の準備を進めている場合や、今後特許につながる可能性のある場合はどう回答すれば良いですか。 

  A. 既に出願している場合のみお答え下さい。

   
  Q. 問5-8(ベンチャー企業) 5)で、ベンチャー設立の理由を尋ねています。研究チームが企業設立において主導的な役割を果たしていないので、設立の背景を十分に理解していないのですが、答える必要はありますか。 

  A. いいえ。その場合、「(f)その他」に設立への関与が低い由お書き下さい。

   
  Q. 問5-9 研究プロジェクトの成果が、標準につながるとはどういう意味ですか。

  A. この質問は、研究成果がISO(国際標準化機関)の規格や、JIS(日本工業規格)になりましたか、ということです。実験成果の測り方など、試験・検査方法の開発をされていらっしゃる研究者の方には、それらの成果を公的な場で標準化することが研究の最終目的である場合もあり、特許、論文とならび、標準化も大きな研究成果の一つとなっています。また、ソフトウェア関係の研究者では、作られたソフトがフォーラムなどで標準となることが重要な成果だといわれています。なお、日本語には「Standard」の訳語として、「標準」と「規格」の二つが考えられますが、今回はJIS Z 8002においてより広い範囲を規定する「標準」の用語を使わせていただきました。

   
  Q. 問6-4 4)において、「研究プロジェクト開始時点からさかのぼって、5年以内における異動経験」を聞いていますが、出向は含みませんか。 

  A. 含みません。出向は5)の問いのみに「あり」として下さい。

   
  Q. 問6-4 客員のポジションを新たに得たことは、問い4)の異動となりますか。

  A. 主たる職務に変更があった場合にのみ異動として下さい。

   
  Q. 研究プロジェクトの管理には直接携わっていなかったので、研究資金などの項目には回答が困難であり、回答を完了することができません。どうしたら良いでしょうか。 

  A. 当該論文をもたらした研究プロジェクトの管理に直接携わって来られなかったので、「当該プロジェクトに要した全労力」など、一部の入力が必須となっている質問に回答出来ないために、先の質問画面に進めないとのご指摘を賜りました。そのような事情でご回答が難しい場合には、以下の質問について「不明」であることを示すために、各回答欄に次のようにご記入頂くようにお願いします。ご面倒をおかけして申し訳ありません。
・ 質問3-2 研究プロジェクトに費やした「全労力」が不明の場合は、回答欄に
  「999999」を入力してください。
・ 質問3-3 研究資金が不明の場合は、「(g) 10億円以上」をお選びになり、その
  右の回答欄に「9999」を入力してください。
・ 質問4-3 プロジェクトのために特別に雇用されていた研究者の数が不明な場合
  についても、回答欄に「999」を入力してください。
・ 質問5-1 研究プロジェクトがもたらした論文数につき、
  1) 日本語、英語、その他の言語での論文数が不明の場合は、各回答欄に
    「999」を入力してください。
  2) 代表論文(最低一つ)が不明の場合は、<論文1>の中のいずれかの回答欄
    に「不明」を入力してください。

科学における知識生産プロセスに関する調査-概要

科学における知識生産プロセスに関する調査


■   研究プロジェクトの概要 

日本では科学の国際競争力を高めるとともに、それを基盤としたイノベーション創出を強化することが重要な課題となっています。しかしながら、科学における知識創造過程や科学知識からイノベーションが創出される過程についての、体系的なプロジェクトレベルの実証研究は、日本のみならず世界的にも存在していないのが現状です。これを受けて、今回、一橋大学イノベーション研究センターと文部科学省科学技術政策研究所の共同研究により、「科学における知的生産プロセスに関する調査」を実施することとしました。米国については、米国のジョージア工科大学などの協力を得て、2010年に実施の予定です。

  本研究では、日米の全分野の科学者を対象とした包括的な質問票調査を行い(日米それぞれ7千名以上を対象)、科学における知識生産プロセスとそのイノベーション創出における日本の構造的な特徴を明らかにする客観データを得ることを目的としています。これによって、日米のサイエンスについて、以下の基本的な問いに実証的な回答を与えることを目指しています。これらについての構造的な理解は、今後のサイエンスのあり方を検討する上でも重要な役割は果たすと考えています。

  (1) 日本で活動する科学者による研究プロジェクトは、どの程度の頻度で純粋基礎研究(ストークスの分類で言えば「ボーアの象限」)にあり、どの程度の頻度で目的基礎研究(「パスツールの象限」)や応用研究(「エディソンの象限」)にあるのか。  

  (2) 着想から国際的な研究業績までにどの程度の時間を要するのか、この間の研究資金をどのように確保しているのか。  

  (3) 学際的なチーム、分野融合的なチームあるいは国際的なチームが質の高い研究ができるのかどうか。研究者の組織間の移動はどのように研究のパフォーマンスに影響をするのか。  

  (4) 研究においてセレンディピティーはどの程度重要なのか、どのような研究でそれが生まれやすいのか。  

  (5) 研究におけるグローバルな競争の状況や自らの研究の位置づけを事前にどの程度、科学者は認識しているのか。  

  (6) 大きなブレークスルーが生じた要因として何が重要であるか。研究領域自体の新規性、研究方法の革新、セレンディピティーなど。  

  (7) 研究の成果を論文の他、どの程度特許化しているのか。特許化にどのような制約があるのか。またどの程度産学連携研究を派生させているのか、そのためにどのような誘因と制約があるのか。  

  (8) 研究成果をベースとしたイノベーションがどのようなルート(ライセンス、スタートアップ、コンサルティングなど)で生じているのか。このようなイノベーション創出が生じやすい研究には、研究の動機や研究チームの構成にどのような特徴があるのか。また科学者はノウハウの移転のための契約、大学から企業への移動などを含めて、どのように関与しているのか。どのような制度を利用しているのか。それにどのような制約があるのか。  

   なお、本研究は科学研究費補助金(「サイエンスにおける知識生産プロセスとイノベーション創出の研究」課題番号:21243020)の助成を受けて実施しています。2009年度から4年間の計画で研究を進めています。  

 研究チーム  

長岡貞男
(研究代表者) 一橋大学イノベーション研究センター 教授、文部科学省科学技術政策研究所 客員研究官、経済産業研究所 研究主幹  

江藤 学
   一橋大学イノベーション研究センター 教授  

伊神正貫
  文部科学省科学技術政策研究所 主任研究官、
  一橋大学イノベーション研究センター 特任准教授  

伊地知寛博
  成城大学社会イノベーション学部 教授、
  文部科学省科学技術政策研究所 客員研究官  

 大湾秀雄
  東京大学社会科学研究所 准教授  

楡井 誠
  一橋大学イノベーション研究センター 准教授  

清水 洋
  一橋大学イノベーション研究センター 専任講師  

Paula E. Stephan
  ジョージア州立大学 教授  

John Walsh
  ジョージア工科大学 准教授