2012年3月9日金曜日

TCERコンフェレンス「日本企業の組織改革とパフォーマンス:企業パネルデータによる分析」2012.3.9

TCERコンフェレンス「日本企業の組織改革とパフォーマンス:企業パネルデータによる分析」
  日時: 2012年3月9日(金)9時半~18時半 
会場: 一橋大学第三研究館 三階研究会議室
主催: 東京経済研究センター及び一橋大学
  コンフェレンスの趣旨
 世界的な競争環境の変化、日本における純粋持ち株会社の解禁、連結納税制制度、企業分割制度の導入等の制度改革を受け、1990年代の後半から2000年代に入って日本企業においても事業再編、組織変革が急速に進んできている。買収、合併が活発となり、また日本企業は企業グループでの事業編成にも取り組んでいる。しかし同時に、産業の垂直分割の進展などの急激な世界的な産業組織の変化に、日本産業は必ずしも円滑に対応できていないとも指摘されている。
本コンフェレンスでは、1990年代からの日本企業における事業再編や組織変革の実態の把握、その企業パフォーマンスとの関係、制度改革の効果等についての研究を報告し、現在までに得られている研究成果をまとめると共に、今後の研究課題を明らかにする。
  プログラム
    ご挨拶
  経済産業省企業統計室長 高辻育史
         
9時半から11時
 セッション1  連結納税制度、純粋持株会社の導入とその効果
  司会  長岡貞男(一橋大学イノベーション研究センター 教授)

(1)"Does the Japanese Consolidated Tax Return System Help Encourage High-Risk Investment?"
    伊藤秀史(一橋大学大学院商学研究科 教授)
   (コメント)  宮川大介(日本政策投資銀行 設備投資研究所金融経済研究センター副主任研究員)

(2)「純粋持株会社化の決定要因」 
   淺羽茂(学習院大学経済学部 教授)
   (コメント)  菊谷達弥(京都大学経済学研究科 准教授)
    11時20分から12時50分
セッション2 多角化企業及びグループ企業の組織設計とそのマネジメント
司会 伊藤秀史(一橋大学大学院商学研究科 教授)
 
(3)「多角化企業における本社組織規模の決定要因」 
   軽部大(一橋大学イノベーション研究センター 准教授)
  (コメント) 浅川和宏(慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授)

(4)"Managing Competency Creating R&D Subsidiaries: Evidence from Japanese Multinationals"
   元橋一之(東京大学大学院工学研究科 教授)
  (コメント) 浅川和宏(慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授) 
  13時40分から15時10分 
セッション3 グループ企業のガバナンスとパフォーマンス
司会 淺羽茂(学習院大学経済学部 教授)

(5)「コーポレート・ガバナンスと多角化行動」 
  花崎正晴(日本政策投資銀行設備投資研究所 所長)
   (コメント)  伊藤秀史(一橋大学大学院商学研究科 教授)

(6)「グループ内企業へのガバナンスの構造とパフォーマンス:セグメント、企業及びグループレベル
   での分析」
   長岡貞男(一橋大学イノベーション研究センター 教授) 及び金榮愨(専修大学経済学部 講師)
   (コメント)  森川正之(経済産業研究所 副所長・理事)
  15時30分から18時15分
セッション 4 産業の研究開発機会、競争条件の変化と企業の多角化・集約化行動
司会 元橋一之(東京大学大学院工学研究科 教授)
 
(7) 「事業多角化と本社間接部門」 
  菊谷達弥(京都大学経済学研究科 准教授)
  (コメント) 牛島辰男(青山学院大学国際マネジメント研究科 教授)

(8)「日米上場企業の連結ベースでの多角化データベースの構築と日米の比較分析」
   金榮愨(専修大学経済学部 講師)
  (コメント) 淺羽茂(学習院大学経済学部 教授) 
(9)「産業特性と企業の多角化・集約化の方向」
   長岡貞男(一橋大学 イノベーション研究センター 教授)
  (コメント) 飯塚敏晃(東京大学大学院経済学研究科 教授)  

2012年1月16日月曜日

「バイオベンチャーの成長への課題」WP#12-01,2012年1月


■ 「バイオベンチャーの成長への課題:提携と代表者の交代を中心に」

本庄裕司・長岡貞男・中村健太・清水由美
    IIRワーキングペーパー WP#12-01,2012年1月


本稿では,「2010年バイオベンチャー統計調査」(2010年度調査)にもとづいて,研究開発費の資金調達,提携,代表者の経歴を中心に,日本のバイオベンチャーの現状と成長への課題を調査・分析する.2010年度調査で新たに追加した調査項目を通じて得られたおもな知見は以下のとおりである.
(1) 提携(ライセンス・アウト,共同研究開発,受託研究)の有無について回答のあった企業のうち,約5割が公的機関・大学との共同研究開発,約4割が国内企業との共同研究開発を実施しており,約3割が国内企業からの受託研究を行っている.また,国内企業へのライセンス・アウトについて実績のある企業は1割強であったが,現在,提携を実施していない企業の多くが提携を希望している.こうした提携は,企業が保有しているコア技術の発展・活用を目的としている場合が多数を占めており(共同研究開発の9割,受託研究の7割,ライセンス・アウトの8割),バイオベンチャーにおける提携の多くは,コア技術の発展・活用に傾注している.提携機会は企業成長に重要な役割をはたすと考えられる.
(2) 提携パートナーの獲得にあたって有効だった方法として,回答のあった企業のうち,約7割の企業がライセンス・アウト,共同研究開発,受託研究のいずれの提携についても「自社による提携先の個別開拓」をあげており,その比率はもっとも高い.また,「自社技術に関する学会報告」は,ライセンス・アウトについて約3分の1,共同研究開発について約4割,受託研究について約3割の企業が有効と回答しており,サイエンスとのつながりの強いバイオテクノロジーの特徴を色濃く反映した結果となっている.さらに,「バイオジャパン等における公開展示」は,共同研究開発と受託研究について2割近い企業が有効と回答している.特許の公開公報も約1割の有効と回答している.
(3) 2000-2004年設立の企業のうち44%で設立以降に代表者の交代がみられており,全体として約4割の企業で代表者が交代している.コア技術の変更頻度(約3割)と比較して,代表者の交代の頻度のほうが大きい.創業者(設立時の代表者)とその後に企業を継承した代表者(継承代表者)との個人属性を比較すると,継承代表者のほうが大学出身者よりも大企業出身者の占める比率が大きく,博士号取得者の比率は小さい.
(4) 代表者の交代は,設立時の代表者が高齢な場合に発生しやすく,逆に,高学歴(博士)の場合に発生しにくい.また,代表者の交代は,設立時にベンチャーキャピタルや他社の出資が大きい場合に発生しやすい.企業年齢をコントロールしても,代表者の交代と設立時の企業規模との間に有意な正の相関がみられる.
提携は,共同研究開発のようにバイオベンチャーがコア技術をさらに発展させるうえで,また,ライセンス・アウトのようにコア技術を商業化していくうえで重要な役割をはたしている.提携パートナーの獲得にあたって,バイオベンチャーが自社による提携先の個別開拓がもっとも重要であるが,同時に,学会やバイオジャパンなどでの公開展示や発明公報なども貴重な機会を提供している.新しい技術との融合や新しい用途の発見が,先端技術の開発にはたいへん重要であり,そのために,様々な提携機会が必要となるだろう.
日本のバイオベンチャーの約半数は,大学や公的研究機関からの技術をコア技術として誕生しているが,基礎的な技術を基盤として商業化への具体的なシーズを探索する段階と,技術的な発展の可能性が確定したシーズを商業化する段階で,必要とする代表者の経験やスキルは異なる可能性がある.こうした点を踏まえれば,それぞれの経営課題にふさわしい代表者に交代することはバイオベンチャーの成長にとって必要であり,そのために,専門的な経営者を育成していくことも重要といえる.
日本のバイオ関連分野において,ここ数年,新しい企業の誕生に大幅な減少傾向がみられている.この点について,リーマンショック以来,金融市場の収縮が大きく影響していると考えられ,また,本稿で示したように,既存プロジェクトの研究開発費について全体の6割以上の企業が何らからの資金制約に直面しており,バイオ関連分野への資金の還流の停滞が新しい企業の誕生や成長を阻害している可能性は高い.バイオ関連分野の技術的な発展の可能性を追求し,それを経済的な成果に結びつけるために,新しい企業の参入が持続的に発生するシステムの構築が不可欠である.そのために,潜在的な創業者,研究者,投資家,既存の大手企業からみて,バイオ関連分野の創業が魅力ある事業機会となる環境整備が必要といえる.今後,資本市場の活性化,大学からのシーズの初期開発への支援,提携の推進など,サイエンスベースのイノベーションシステムを有効に機能させるための企業と政府の一層の努力が重要であろう。

2011年12月31日土曜日

"Knowledge Creation Process in Science"WP#11-09,October 2011


■"Knowledge Creation Process in Science: Key Comparative Findings from the Hitotsubashi-NISTEP-Georgia Tech Scientists' Survey in Japan and the US"

Nagaoka, Sadao, Masatsura Igami, John P. Walsh and Tomohiro Ijichi
   IIR Working Paper WP#11-09,October 2011              
       [pdf版 download]


This paper reports the initial findings from large scale surveys of the scientists based in Japan and the US on the knowledge creation process in science from a comparative perspective. The survey in Japan was jointly conducted by the Institute of Innovation Research (IIR) of Hitotsubashi University and the National Institute of Science and Technology Policy (NISTEP) from the end of 2009 to the summer 2010. The survey in the US was implemented by the Georgia Institute of Technology, in collaboration with IIR and NISTEP, from autumn 2010 to early 2011. It collected around 2,100 responses from scientists in Japan and 2,300 responses from scientists in the US on their research projects that generated the scientific papers subjected to the surveys.

「半導体産業における国際競争力低下要因を探る」WP#11-08,2011年5月


■ 「半導体産業における国際競争力低下要因を探る:ネットワーク分析の視点から」

中馬宏之
   IIRワーキングペーパー WP#11-08,2011年5月                       


半導体デバイスやバイオ医薬品に代表される日本のサイエンス型産業において、世界市場シェアの長期にわたる減少・停滞傾向が著しい。その主要な原因の一つは、急加速したテクノロジー・マーケットの複雑性(含むグローバル化)増大スピードに日本勢がなかなかついて行けなくなってきている点にある。本論の主要な目的は、このような問題意識に基づいて、クロック・スピードになかなかついて行けなくなってきている日本の半導体産業の様子を、High-k/Metal Gateと呼ばれる最先端の半導体プロセス技術事例に基づいて一目瞭然化することにある。オリジナリティは、聞き取り調査と異次元の可視化能力持つネットワーク分析によって一目瞭然化するための方法論の提示とそれに基づいたと分析結果である。そして、日本勢がなぜスピードについて行けなくなってきているのか?どのようにすればついていけるようになるのか?という難問解決のための糸口を模索する。

「半導体産業の収益性分析」WP#11-03,2011年3月


■ 「半導体産業の収益性分析:半導体企業パネルデータによる実証分析」

中屋雅夫
   IIRワーキングペーパー WP#11-03,2011年3月              


1991年から2009年までの世界半導体企業売上上位62社の売上高、営業利益と半導体非専業企業9社を除く53社の売上原価、研究開発費、販売・一般管理費も調査し、収益性、費用構造のパネルデータによる実証分析を行った。53社を主要製品群、ビジネスモデル、本社所在地域(国籍)について分類し、その差異を明らかにした。これらの分析より、半導体産業全体として見れば、過去、微細化により製品の性能向上、経済性向上を同時に実現し、更に微細化を進めるという好循環で成長してきたが、近年、微細化による製造費用上昇、設計費用上昇などにより、利益率の低下がみられる。しかし、半導体、集積回路製品は社会のいたるところに使われ規模が拡大すると予測されている。産業としての健全な成長のためには利益を確保していくことが欠かせず、収益性が、製品群、ビジネスモデル、地域によりどのような差があるか、収益性のデータで明らかにした。

"Knowledge Creation Process in Science"WP#10-08, December 2010


■"Knowledge Creation Process in Science: Basic Findings from a Large-scale  Survey of Researchers in Japan"

Nagaoka, Sadao, Masatsura Igami, Manabu Eto and Tomohiro Ijichi
   IIR Working Paper WP#10-08, December 2010 


This paper reports the initial findings from a large scale survey of Japanese researchers on theknowledge creation process in science. The survey was jointly conducted by the Institute of Innovation Research of Hitotsubashi University and the National Institute of Science and Technology Policy . It collected 2,100 responses on research projects, one third of the sample are from highly cited papers (top 1% in the world, H papers hereafter) in each science field by year and the rest of are from the other randomly selected papers (N papers hereafter). We call the research projects that yielded H (N) papers by H (N) projects. The survey covered all scientific fields, including social sciences, and characterized the motivations of the research projects, the knowledge sources which inspired the projects, uncertainty in the knowledge creation process, research competition, composition of the research team, sources of research money, and the research outputs, including the papers, the patents, the collaborative research projects.

「科学における知識生産プロセスの研究」WP#10-07_1


■ 「科学における知識生産プロセスの研究 ― 日本の研究者を対象とした大規模調査  からの基礎的発見事実 ―」

長岡貞男・伊神正貫・江藤学・伊地知寛博
   IIRワーキングペーパー WP#10-07_1(本論),WP#10-07_2(参考資料: 調査票・集計表),
   2010年11月           


科学における知識創造過程や科学知識からイノベーションが創出される過程についての、研究プロジェクトを対象とした体系的な実証研究を行うために、一橋大学イノベーション研究センターと文部科学省科学技術政策研究所は、日本の全分野の研究者を対象とした包括的な質問票調査(「科学における知識生産プロセスに関する調査」)を実施した。2009 年末から2010 年春にかけて質問票調査が実施され、約2,100件の回答が得られた。
 調査対象の約3分の1は被引用数上位1%の高被引用度論文をもたらした研究プロジェクトであり、約3分の2は通常論文(高被引用度論文を除く無作為抽出論文)をもたらした研究プロジェクトである。高被引用度論文産出群(通常群)では調査対象論文の回答者の70%(78%)が大学等に所属し、21%(14%)が公的研究機関に所属し、7.2%(5.7%)が民間企業に所属している。
 本調査は、科学にかかる以下の基本的な問いをカバーしている。
 (1)日本で活動する研究者による研究プロジェクトは、どの程度の頻度で純粋基礎研究(ストークスの分類で言えば「ボーアの象限」)にあり、どの程度の頻度で目的基礎研究(「パスツールの象限」)や応用研究(「エディソンの象限」)にあるのか。
 (2)着想から国際的な研究業績までにどの程度の時間を要するのか、この間の研究資金をどのように確保しているのか。
 (3)研究におけるグローバルな競争の状況や自らの研究の位置づけを事前にどの程度、研究者は認識しているのか。
 (4)研究においてセレンディピティはどの程度重要なのか、どのような研究でそれが生まれやすいのか。
 (5)日本の研究チームはどの程度に学際的、国際的なのか。研究者の組織間の移動はどの程度頻繁に起きているのか。
 (6)研究プロジェクトのマネジメントとしてどのような取り組みを行っているのか。
 (7)研究の成果を論文の他、どの程度特許化しているのか。リサーチツールの生産はどうか。
 (8) 研究成果をベースとしたイノベーションがどのようなルート(ライセンス、標準への貢献、産学連携研究、スタートアップ、技術指導など)で、どの程度の頻度で生じているのか。
  本ワーキングペーパーでは、調査の重要な基礎的発見事実と考えられる点を要約し、今後の調査課題を含めた含意を述べる。本ワーキングペーパーは分析の第一段階であり、これらの発見事実をもとに、今後更なる分析を進めていく。調査で得られた研究プロジェクトについての包括的なデータセットを活用し、また、書誌データや引用データなどとも組み合わせ、発見事実の背景にあるメカニズムや原因の解明に資する分析を実施する予定である。